肥満やメタボのある人のサポートでは「思いやり」も必要 「肥満の人はだらしがない」は誤解
2023年05月29日
過体重や肥満のある人に対する支援やサポートでは、「思いやり(コンパッション)」も必要という声明が発表された。
肥満やメタボの多くは、食事や運動などの生活スタイルの改善により、内臓脂肪がたまるのを防ぎ改善できることが分かっている。
しかし、過体重や肥満の背景には、遺伝(体質)によるものと、環境によるものの両方があり、生育や発達での要因、社会的な要因、ストレスなどがさまざまに影響しており、個人の努力だけで対応できないケースが少なくないとしている。
男性はアルコール、女性は過食で、ストレスに対処しようとする傾向があることも示されている。ストレスを上手に管理することも必要だ。
肥満に対する「スティグマ(誤解や偏見)」を解消
過体重や肥満のある人に対する支援やサポートでは、科学的なエビデンスにもとづき、食事や運動などの生活スタイルの改善を促す介入が必要となる。 そのときには、薬物療法などを行っているかにかかわらず、「思いやり(コンパッション)」もまた必要になるという声明を、米国ライフスタイル医学会(ACLM)が発表した。 ACLMによると、肥満や肥満症を改善するための介入の柱になるのは、次の6項目の生活スタイルの改善だ。▼ 運動や身体活動を習慣として行う | ▼ 全粒穀物や植物性食品の摂取を増やす |
▼ 十分な睡眠をとり休養をとる | ▼ ストレスを管理する |
▼ 活発な社会的な交流を維持する | ▼ 危険なアルコールや薬物などを避ける |
関連する高血圧や高コレステロールなどの予防・改善も必要
最近の研究では、肥満や糖尿病に「腸内細菌叢の異常」「血管内皮機能の障害」「酸化ストレス」「慢性炎症」なども関連することが分かってきた。 さらに、生活スタイル改善のための医学の包括的なアプローチには、「高血圧」「高コレステロール」「心臓病」「2型糖尿病」「関節炎」など、過体重や肥満の患者に多い併存疾患や、関連する合併症の予防や治療についても考慮し、それらのリスクを軽減することも必要としている。 「過体重や肥満の患者さんを治療するために、利用できるツールが多いほど、より良い結果を期待できます。さらには、それらを改善・治療することは、心臓病や糖尿病などの関連する慢性疾患の予防・改善にもつながります」としている。肥満のある人のストレス管理を改善することも重要
男性はアルコール、女性は過食でストレスに対処している傾向
ただし、男性と女性ではストレスへの対処法が異なる傾向があることに、注意する必要があるとしている。 男性は、ストレスを解消するために、アルコールに頼ることが多い。アルコールの過剰な摂取は、アルコール中年期以降の体重増加を加速させる原因になっている。 「酒は百薬の長」ということわざがある通り、適度なアルコールは健康に良いことを示した研究もあるが、アルコールの重大な健康リスクを示した研究も多い。 アルコールにはストレス解消や、人間関係を円滑にするなどメリットがある一方で、過剰な飲酒は確実に体にダメージをもたらし、肥満や2型糖尿病のリスクを高める。 一方、女性では過食が多くみられるという。女性のほぼ半数(41~55%)は、成人期に何らかの摂食障害を経験したことがあり、ストレス解消の手段として、男性よりも食事に向かう傾向がみられるという。 「とくに女性に対しては、体重を減らすように課せられる文化的なプレッシャーが強い傾向があり、食べることでストレスを解消している女性にとって、そのことがより困難にしています」と、ローゼンクビスト氏は指摘している。 研究グループは、フィンランドのコホート研究に参加した22歳、32歳、42歳、52歳の男女計5,621人を対象に、30年間追跡して調査した。「肥満の人は生活がだらしなく自己管理ができない」は誤解
アドボカシー (米国ライフスタイル医学会)
American College of Lifestyle Medicine releases statement calling for compassionate, evidence-based lifestyle intervention as first treatment for overweight and obesity (米国ライフスタイル医学会 2023年4月20日) Managing stress with food and alcohol consumption connected with faster lifelong weight gain (フィンランド保健福祉研究所 2023年4月13日)
Stress-induced eating and drinking and their associations with weight among women and men during 30-year follow-up (Psychology and Health 2023年3月22日) 一般社団法人 日本肥満学会
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