ホルモン分泌は年齢とともに変化 肥満を引き起こすホルモンも【ホルモンを健康にする10の方法】

 4月24日は「世界ホルモンデー」(World Hormone Day)だった。

 ホルモンの産生や分泌は体内でコントロールされており、そのバランスが崩れるとさまざまな不調や病気が引き起こされる。

 内分泌疾患の予防・診断・治療をより推進するために、「ホルモンの健康のための10の提言」が発表された。

ホルモンのバランスが乱れるとさまざまな不調や病気が引き起こされる

 4月24日は「世界ホルモンデー」(World Hormone Day)だった。ホルモンは体の内分泌器官でつくられ、代謝のバランスを調節するさまざまな働きをしており、生命機能を維持するために欠かせない。

 体には、ホメオスターシスと呼ばれる、体の恒常性を維持しようとする機能が備わっている。ホルモンの産生や分泌は体内で厳密にコントロールされており、そのバランスが崩れるとさまざまな不調や病気が引き起こされる。

 欧州内分泌学会(ESE)と欧州ホルモン・代謝(ESE)財団は、世界ホルモンデーに合わせて、内分泌疾患の予防・診断・治療をより推進するために、「ホルモンの健康のための10の提言」を発表した。

ホルモンの健康のための10の提言

出典:欧州内分泌学会、2025年

ホルモン分泌は年齢とともに変化 ホルモンの健康を改善する必要が

 「内分泌学は、ホルモンを研究する学問です。ホルモンのバランスが崩れたり機能不全に陥ったりすると、肥満、糖尿病、甲状腺疾患、がん、骨粗鬆症、肥満といった慢性疾患や、不妊症といった健康問題が引き起こされる可能性があります」と、同学会の理事長でパリ大学内分泌学教授のジェローム ベルテラ氏は述べている。

 体の中には100種類以上のホルモンがある。そのうち、血糖値を下げる働きをするインスリンは、膵臓にあるランゲルハンス島のなかにあるβ細胞でつくられるペプチドホルモンだ。

 食べすぎや運動不足などのライフスタイルや、遺伝的な因子が重なり肥満やメタボになると、そのインスリンが十分に働かなくなるインスリン抵抗性になりやすい。

 また肥満は、脂肪でつくられるレプチン、アディポネクチン、レジスチンなどのホルモンの分泌異常も引き起こす。胃から分泌されるグレリンや、ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールも肥満に関わる。ホルモン異常により、食欲を抑えられなくなったり、動脈硬化が亢進したり、インスリンの作用が弱められることがある。

 女性の心身に大きな影響を与えるエストロゲンやプロゲステロンといった女性ホルモンも、ライフステージごとに分泌が変化していく。更年期になると、女性ホルモンの減少による症状が多くなる。

 「世界ホルモンデーには、ホルモンの健康を改善し、内分泌の健康を高めるために、誰もが実行できる小さなステップを共有し、国や地域でより効果的な医療政策や保健政策を打ち立てることを呼びかけています」と、ベルテラ教授は述べている。

ホルモンの健康のための10の提言
欧州内分泌学会 欧州ホルモン・代謝財団

1
ホルモンバランスを健康に保つために運動習慣が必要
 週に1.5~2.5時間の運動を行う習慣があると、体のホルモン分泌の調節が改善します。たとえば、できるだけ車ではなく徒歩や自転車で移動したり、エレベーターではなく階段を使うようにするなど、日常生活に運動を少し取り入れるだけでも、続ければ大きな違いが生まれます。

2
食事では未加工の自然な食品を十分にとる
 健康的な食生活は、ホルモンのバランスの維持・改善するのに役立ちます。新鮮な野菜、全粒穀物、糖質の少ない果物などを十分にとり、糖質や脂肪などが加えられた高カロリーの加工食品や飲料は最小限に抑えましょう。

3
食事では魚を積極的に食べる
 サバ・イワシ・アジ・サケ・ニシンなどの青魚には、良質なタンパク質とともに、油が多く含まれます。魚油に含まれるEPAやDHAなどには、血栓ができにくくしたり脂質代謝が向上するなどの効果があります。魚には、カルシウム吸収を促したり、タンパク質の働きを活性化するビタミンDも含まれます。ビタミンDは、紫外線を浴びることで皮膚でも生成されるので、日光を浴びるのを習慣にすることも大切。

4
海藻・卵・乳製品などヨウ素を含む食品を食べる
 ヨウ素は甲状腺ホルモンの原料になるので、ヨウ素が含まれる魚介類、海藻、ヨーグルト、牛乳などを十分に食べましょう。ヨウ素のとりすぎが甲状腺の機能低下の原因になっている人は、それらの食品の摂取量を減らした方が良い場合もあるので、食事についてはかかりつけの医師や栄養士に相談することも大切。

5
カルシウムを十分にとる
 ヨーグルト、豆類、ナッツ類、緑の濃い葉野菜など、カルシウムが含まれる食品を十分に摂取すると、骨や歯の健康に役立ちます。そうした食品を食べるのが難しい人は、カルシウムのサプリメントを利用するのが良い場合もあるので、かかりつけの医師などに相談しましょう。

6
規則正しい十分な睡眠はホルモンバランスを保つために必要
 毎日7時間以上の睡眠をとり、生活リズムを規則正しく維持することで、目覚めが良くなり、日中はエネルギーに満ち、爽やかに活動できるようになります。睡眠を改善するために、夕食は早めにとり、就寝前の時間にスマートフォンなどの画面を見ないようにするなどの工夫が役立ちます。

7
内分泌撹乱物質にご注意
 プラスチック包装が、内分泌撹乱作用を有する疑いのある環境ホルモンの発生源になるという報告が増えています。気になる人は、プラスチック容器の代わりに、ガラス製やステンレス製の容器を使用したり、「BPAフリー」や「BPSフリー」の表示のあるものを使いましょう。内分泌撹乱物質については、世界中で研究や調査が進められています。

8
化粧品やケア製品に何が含まれているかに注意する
 化粧品やケア製品、家庭用品などに、内分泌撹乱作用の疑いのあるビスフェノールA、フタル酸ビス、フタル酸ベンジルブチルなどの化学物質を使用するのを規制する国や地域は増えています。そうした製品を利用するときは、何が使われているをよく見ることも大切。

9
家では換気や掃除をする
 家の中外の空気に内分泌撹乱作用を有する疑いのある物質が含まれている場合もあります。家庭内では、換気をして、掃除機を定期的にかけ、ほこりを払い、塵粒子を減らすことで、そうした物質の曝露を減らすことができます。

10
気になる症状がみられる場合は医療機関を受診し診察を受ける
 原因不明の体重の増減、食欲の変化、過度ののどの渇き、髪や爪がもろくなる、疲労感、乾燥肌、うつの兆候、性欲減退、月経不順などのある場合は、その背後に深刻な病気が隠れている可能性もあります。気になる症状がみられる場合は、医療機関を受診することが大切。

World Hormone Day 2025 (欧州内分泌学会)
World Hormone Day 2025 - global endocrine community unites to raise public awareness of the small steps everyone can take towards good hormone health (欧州内分泌学会 2025年4月23日)
10 recommendations for good hormone health (欧州内分泌学会、欧州ホルモン・代謝財団)