食品のカロリー表示が肥満やメタボのリスクを減少 誰もがチーズバーガー3個分を食べ過ぎている?

 ハンバーガーやホットドッグ、サンドイッチ、ピザ、レトルトなどの調理済み食品や外食に栄養表示をし、含まれるカロリー・脂肪・塩分・糖質などを分かりやすくすると、より健康的な食品を選べるようになるという研究が発表された。

 誰もが食事の摂取カロリーを過小評価してしまう傾向があり、実際には1日にチーズバーガー3個分のカロリーを摂り過ぎているという調査結果も報告されている。

 「不健康な食事スタイルは、決して個々の人々にのみ責任があるわけではありません。食料の政策・産業・流通・政府のガイドラインなどにも責任はあります」と、研究者は指摘している。

調理済み食品や外食にカロリー表示を

 レストランやカフェ、テイクアウト、ネット通販などで売られている食品やメニューにカロリー表示があると、消費者が健康的な食品を選べるようになり、肥満やメタボ、糖尿病のリスクを低下できるという調査結果が発表されている。

 ハンバーガーやホットドッグ、サンドイッチ、ピザ、レトルトなどの調理済み食品に栄養表示をし、含まれるカロリー・脂肪・塩分・糖質などを分かりやすくすると、消費者はより健康的な食品を選べるようになるという。

 「外食メニューなどにカロリー表示をし、消費者がより健康的な食品を選びやすくする必要があります」と、研究者は述べている。

 研究は、英国のバース大学やブリストル大学によるもの。2万707世帯を対象に行った調査で、栄養ラベルが表示されている店舗で買い物をした消費者は、平均して月間に総カロリーを588Kcal、体に悪い飽和脂肪酸を14g、ナトリウム(塩分)を0.8mg、糖分を7gそれぞれ減らしていた。

 外食の飲食店のメニューにカロリーを表示し、消費者が低カロリーの食事を選べるようになると、肥満やメタボが減少し、心血管疾患や2型糖尿病のリスクは減少するという研究も発表されている。

カロリーや栄養の表示があれば健康的な食品を選びやすくなる

 「肥満や2型糖尿病など健康問題は、40年以上にわたり拡大しています。現在は、それに新型コロナも加わっています。新型コロナにより、人々が健康的な食品を選択するようにするための戦略はますます重要になっています」と、タフツ大学栄養科学政策部のダリウシュ モザファリアン教授は言う。

 英国糖尿病学会(Diabetes UK)は、レストランやカフェ、テイクアウトなどのすべての外食の店舗のメニューにカロリー表示を義務付けることを英国政府に求める、「Food Upfront」キャンペーンを展開している。

 英国で購入できるすべての食品や飲料に栄養ラベルを貼ること義務付けるとともに、高カロリーで栄養価の低いジャンクフードの広告を制限することも求めている。

誰もがチーズバーガー3個分のカロリーを余計に食べている?

 外食や通販などで売られている食品やメニューにカロリー表示がないと、人々は簡単に高カロリーの食品を食べ過ぎてしまうという研究も発表された。

 誰もが食事の摂取カロリーを過小評価してしまう傾向があり、実際には1日にチーズバーガー3個分のカロリーを摂り過ぎているという調査結果を、英国のエセックス大学が発表した。

 チーズバーガー1個のカロリーは300kcal。研究では、毎日の食事で摂取しているカロリーは1,800kcalぐらいと思っている人が多いが、実際には、やせている人でも、平均してそれよりも800kcal多いカロリーを摂取していることが示された。

 肥満のある人では、1,200kcal多いカロリーを摂取している。やせている人も肥満のある人も、自分の食事の摂取カロリーを大幅に過小評価しているが、実際にはそれよりも、かなり多くのカロリーを摂り過ぎているという。

 研究グループは、平均年齢54歳の221人を対象に、食事アンケートを実施し、実際に摂っているカロリーの摂取量と燃焼量について測定した。

自分が摂取しているカロリーを正しく知ることが大切

 「肥満や2型糖尿病の人の食事療法では、まず食事のカロリー摂取量を設定し、食べ過ぎないようにすることが基本になりますが、食事のカロリー摂取量は自己申告によるものが多いのです」と、エセックス大学スポーツ・リハビリテーション・運動科学部のギャビン サンダーコック教授は言う。

 「しかし、自分が食事で摂取しているカロリーを正しく評価できないと、目標となるエネルギー摂取量を達成するのは難しくなってしまいます」。

 「身の回りに、カロリー密度の高い加工食品、脂肪が多く食物繊維の少ない食品、高カロリーの甘い飲み物やお菓子など、カロリーの摂り過ぎにつながりやすい食品があふれています。食品のカロリーや栄養の表示を徹底し、食事ガイドラインも見直す必要があります」と、サンダーコック教授は指摘する。

食品のメニューや品揃えを変えると健康的になり環境保護にも役立つ

 レストランなどの外食や、コンビニ、ネット通販などで提供されている食品のメニューやラインアップを変えることで、食事を改善でき、健康的になるだけでなく、環境保護にもつながる可能性がある。

 これは、英国のケンブリッジ大学の研究によるもの。たとえば、お菓子の販売を減らして、ナッツ類や野菜、果物などに置き換えたり、低カロリー甘味料を使用した食品や、ノンアルコール飲料、大豆ミートなど植物ベースの食品を増やすことで、より健康的になれるとしている。

 「高カロリーの食品や、脂肪の多い加工肉、アルコールなどの不健康な食品の消費拡大は、世界的に肥満や2型糖尿病の増加につながり、早死の原因になっています。これらは予防可能なものであり、健康格差や環境破壊も引き起こしています」と、同大学行動・健康・研究ユニットのテレサ マルトー氏は言う。

不健康な食事は個人だけの責任ではない 社会にも責任が

 研究グループは、食品の利用可能性を変化させる方策をさぐった、4件の新たな研究を含む9件の介入研究を解析した。

 たとえば、外食レストランで、野菜など植物性食品ベースの食品の選択肢の割合を25%から50%に増やすと、肉など動物性食品ベースの料理の選択が81%から73%に減少するという。

 また、低カロリーの食品の割合を42%から50%に増やすと、摂取カロリーは384kcalから366kcalに5%減少する。

 「不健康な食事スタイルは、決して個々の人々にのみ責任があるわけではなく、食料の政策・産業・流通・政府のガイドラインなどにも責任はあります。健康的な生活スタイルと環境保護を、ともに持続可能な社会の実現に向けた戦略として一致させることは可能です」と、マルトー氏は述べている。

Nutrition labelling is improving nation's diet - new study (バース大学 2020年8月12日)
The response to nutritional labels: Evidence from a quasi-experiment (Journal of Health Economics 2020年7月)
Calorie data on menus could generate significant health, economic benefits (American Heart Association 2020年6月4日)
Health and Economic Impacts of the National Menu Calorie Labeling Law in the United States: A Microsimulation Study (Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes 2020年6月4日)
Calorie Labelling To Be Made Compulsory In Restaurants, Cafes And Takeaways (英国糖尿病学会 2021年5月13日)
Food Upfront - Campaigning For Clear Food Labelling (英国糖尿病学会)
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Obese individuals do not underreport dietary intake to a greater extent than nonobese individuals when data are allometrically-scaled (American Journal of Human Biology 2022年3月8日)
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