肥満のある人は歯周病リスクも高い 歯を失わないためにも肥満の予防・改善が必要

 肥満のある人は、歯周病を発症するリスクが高く、また悪化することが知られている。歯周病と肥満は相互に関連していると考えられている。

 肥満とは、体脂肪の異常・過剰な蓄積状態のことで、全身の健康に悪影響をおよぼす。一方、歯周病は、成人が歯を失う主な原因であり、健康な生活を送るうえで、予防が重要となる。

 岡山大学は、このふたつが関連するメカニズムを明らかにしたと発表した。「歯を失う主な原因である歯周病を予防するためには、肥満の予防・改善を心がけることも大切です」と、研究者は述べている。

口の健康を保つために肥満に目を向けることも大切

 岡山大学は、肥満と歯周病が関連するメカニズムを明らかにしたと発表した。これまでの疫学調査で、肥満と歯周病の関連について報告されているものの、その具体的なメカニズムはよく分かっていなかった。

 研究グループは、ラットを用いた動物実験で、肥満ラットに特徴的な血液中のmicroRNAと歯周組織中のmRNAを網羅的に解析し、肥満と歯周病の関連性についてのメカニズムを解明した。

 microRNAは、21~23塩基程度の一本鎖RNAで、遺伝子発現の調節に関わり、さまざまな疾患の発症と進行に関与している。またmRNAは、DNAの遺伝情報をもとにタンパク質を生成する際の設計図となるもの。

 「肥満が歯周病にも関連していることを解明しました。口の健康を保つためには、歯や歯ぐきを診る歯科診療だけでなく、全身の健康にも目を向けることが大切です」と、研究者は述べている。

 研究は、岡山大学学術研究院医歯薬学域予防歯科学分野の丸山貴之助教、森田学教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Periodontal Research」に掲載された。

肥満が歯周病にも関連していることを遺伝子で解明
出典:岡山大学、2022年

肥満にともなうmicroRNAの変化が歯周組織の遺伝子を発現

 研究グループは、高脂肪食を与えた肥満ラットと普通食を与えたラットの歯槽骨の吸収状態を比較し、肥満ラットのほうが歯槽骨の吸収が大きい、すなわち歯周病が進んでいることを確認した。

 続いて、血液中のmicroRNA、歯周組織中のmRNAを網羅的に解析し、肥満ラットに特徴的な血液中のmicroRNA(8種類)、歯周組織中のmRNA(23種類)を列挙した。その後、データベースを用いて、血液中のmicroRNAと歯周組織中のmRNAの関連性について検討した。

 その結果、肥満にともなう血液中のmicroRNA(4種類:miR-759、miR-9a-3p、miR-203b-3p、miR-878)の変化が、歯周組織の遺伝子発現(7種類:Ly86、Arid5b、Rgs18、Mlana、P2ry13、Kif1b、Myt1)を変化させ、その一部の遺伝子が歯槽骨の吸収に関連していることを解明した。

 「歯を失う主な原因である歯周病を予防するためには、歯科医院での歯周病治療が重要ですが、全身の健康にも目を向け、肥満の予防・改善を心がけることも大切であると考えられます」と、丸山助教は述べている。

岡山大学学術研究院医歯薬学域予防歯科学分野
Association between serum miRNAs and gingival gene expression in an obese rat model (Journal of Periodontal Research 2022年3月2日)