1日30分の「サーキット運動」が中・高年の女性の認知力を改善 ポジティブ気分も向上

 東北大学加齢医学研究所は、筋力トレーニングと有酸素運動、ストレッチを組み合わせた「サーキット運動」が、中・高年の女性の認知力とポジティブ気分を即時的に向上するという研究結果を発表した。
筋力トレーニングと有酸素運動、ストレッチの組み合わせ
 この研究は、東北大学加齢医学研究所の野内類准教授と川島隆太教授が、カーブスジャパンと共同で行ったもの。研究成果は、医学誌「Frontiers in Aging Neuroscience」オンライン版に掲載された。

 「サーキット運動」は、上半身の筋力トレーニング、ステップボードでの有酸素運動、下半身の筋力トレーニングを組合せて行い、最後にストレッチを行う運動法。

 運動は、認知機能(記憶力や処理速度や抑制能力など)や気分を向上させることが知られている。これまでに研究グループは、有酸素運動と筋力トレーニングなどを組わせたサーキット運動トレーニングを4週間実施するだけで、高齢者の認知機能が向上することを明らかにしている。

 研究グループが2013年に発表した研究では、サーキット運動が高齢者の広範囲な認知機能を改善することが示された。4週間の運動により、実行機能、エピソード記憶、処理速度などの認知機能を広範囲に改善するという。

 さらに、30分間のサーキット運動を1回実施するだけでも、認知機能や気分が一時的に向上するという即時効果も報告している。サーキット運動は高齢者でも取り組みやすいため、高齢者の認知症予防や認知機能リハビリなどへの応用が期待されるという。

サーキット運動トレーニング

出典:東北大学加齢医学研究所、2020年
サーキット運動の認知機能と気分への即時効果を検証
 運動の即時効果を調べたこれまでの研究は、ウォーキングなどの有酸素運動の即時効果を中心に調べており、サーキット運動の即時効果についてはよく分かっていなかった。

 そこで研究グループは今回の研究で、女性を対象に無作為比較対照試験を行い、サーキット運動の即時的な効果を検証した。

 精神疾患、脳疾患、高血圧の既往歴のない健康な中年女性32人と高齢女性32人を、有酸素運動・筋力トレーニング・ストレッチを実施する「サーキット運動群(中年者16人、高齢者16人)」と、何もしないで待機する「対照群(中年者16人・高齢者16人)」に分けた。

 サーキット運動群は、ステップボード上で実施する有酸素運動と油圧式マシーンを用いた筋力トレーニングと全身のストレッチを行った。有酸素運動と筋力トレーニングは、30秒ごとに交互に実施する方法を用い、合計で30分間運動した。一方で対照群は、30分の間何もしないで待機した。

 両群ともに、1回30分の介入の前後に認知機能検査や感情状態を聞く心理アンケートを実施し、介入による変化を計測した。

出典:東北大学加齢医学研究所、2020年
運動習慣のない人や中高年者も取り組みやすい運動を
 サーキット運動群と対照群の、認知機能検査と、感情状態を聞く心理アンケートの変化量を比較し、サーキット運動の即時効果を調べたところ、サーキット運動群の方が対照群よりも、認知力、活力気分が向上することが明らかになった。

 認知力は「ストループ」でテストした。これは、視覚情報(色)と言語情報(文字)の間に起こる干渉により、情報処理過程に競合が生じるのを検査するもの。感情状態については「POMS-II」を使い測定した。35項目の質問に回答してもらい、怒り、混乱、抑うつ、疲労、緊張、活気、友好の7つの感情について調べた。

 その結果、1回30分のサーキット運動をしたグループは、何もしなかったグループに比べ、認知力(抑制能力)とポジティブ気分(活力)が即時的に向上したことが明らかになった。

 「サーキット運動は、中程度の運動負荷(最大心拍の約70%)であることから、中高年者でも取り組みやすく、運動習慣のない人でも、運動を始めるきっかけや運動を継続するモチベーションを高められると期待できます」と、研究グループは述べている。

サーキット運動群と対照群の介入による変化量
出典:東北大学加齢医学研究所、2020年

東北大学加齢医学研究所
A Single 30 Minutes Bout of Combination Physical Exercises Improved Inhibition and Vigor-Mood in Middle-Aged and Older Females: Evidence From a Randomized Controlled Trial(Frontiers in Aging Neuroscience 2020年6月24日)

カーブスジャパン