大豆など「植物性タンパク質」が寿命を延ばす 動物性の3%を置き換えただけで死亡リスクが低下

 「動物性タンパク質」を「植物性タンパク質」に置き換えることで、心血管疾患や2型糖尿病のリスクが減少するという研究が発表された。
 野菜や穀物、大豆などの植物性食品を食べることで、寿命を延ばせる可能性がある。
動物性食品の食べ過ぎに注意
 タンパク質は、肉・卵・牛乳・魚などに多く含まれる「動物性タンパク質」と、野菜・全粒穀物・大豆・豆類、ナッツなどに含まれる「植物性タンパク質」に分けられる。

 筋肉はタンパク質でできており、合成と分解が常に繰り返されているので、食事でタンパク質をしっかり摂ることが必要だ。

 筋肉を維持するためには、1日に体重1kgあたりタンパク質1g以上を摂りたい。フレイルのリスクのある高齢者では、筋肉を増やす必要があるため、タンパク質は1日に体重1kgあたり1.2g以上が必要になる。

 しかし、注意したいのは、動物性食品を食べ過ぎないようにした方が良いということだ。動物性タンパク質はアミノ酸スコアが高く、良質なタンパク源になるが、食べ過ぎると、飽和脂肪酸やコレステロールが増えるおそれがある。
植物性タンパク質を増やすメリット
 植物性タンパク質を摂取すると、2型糖尿病や高血圧のリスクを抑えられるという研究が発表されている。植物性タンパク質を摂ることで、血圧、コレステロール、血糖値の好ましい変化を得られる。

 東フィンランド大学の研究では、毎日約5gの動物性タンパク質を植物性タンパク質に置き換えると、糖尿病のリスクが18%減少することが示された。植物性タンパク質を摂ることで、血糖値が低下するという。
植物性食品は糖尿病にも良い
 米国糖尿病教育者協会(AADE)によると、野菜、全粒穀物、果物、大豆、豆類、ナッツなどの植物性の食品を摂ることで、過剰にたまった体脂肪が減り、インスリン感受性が改善し、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞を保護する効果を期待でき、糖尿病合併症のリスクが低下する。

 「植物性食品をベースとした食事療法は、糖尿病の治療と予防、減量のために勧められます。野菜などの植物性食品を中心とした食事スタイルをもつ人は、2型糖尿病と心臓病の発生率が低いという報告があります」と、AADEのジェイソン ギャレット氏は言う。

 植物性食品には、食物繊維、抗酸化物質、ビタミン、ミネラルが豊富に含まれている。

 抗酸化物質とは、動脈硬化を引き起こす活性酸素の発生やその働きを抑制したり、活性酸素そのものを取り除く物質のこと。抗酸化ビタミンやポリフェノール、カロテノイドなどの種類がある。

 「植物性食品に含まれる食物繊維により、腸内細菌叢が改善し、短鎖脂肪酸の生産が増加します。短鎖脂肪酸は、有害な菌が増えるのを抑えたり、炎症を抑えるなど、有用な働きをします。そのほかにも、栄養素の吸収の改善、満腹感の改善、インスリン抵抗性の減少など多くの利点があります」と、ギャレット氏は言う。
植物性タンパク質に置き換えると死亡リスクが低下
 朝食で納豆や豆腐、味噌などの大豆食品を食べ、動物の肉を食べ過ぎない食事スタイルは健康につながりやすい――。そんな研究結果を、米国立がん研究所(NCI)が発表した。

 ふだんの食事に含まれる動物性タンパク質を少し植物性タンパク質に置き換えるだけで、心血管疾患などによる死亡リスクが低下する可能性があるという。

 研究グループは、1990年代から米国の各地で実施されている「NIH-AARP食事・健康研究」に参加した男性23万7,036人と女性17万9,068人の1995~2011年のデータを解析した。

 その結果、植物性タンパク質を多く摂っている人は、全死因および心血管疾患による死亡リスクが低いことが明らかになった。

 食事エネルギー摂取量からみて、動物性タンパク質の3%を植物性タンパク質で置き換えた人は、16年間の追跡期間で全死因による死亡リスクが10%減少し、心血管疾患の死亡リスクも、男性で11%、女性で12%、それぞれ減少した。
動物性と植物性のバランスが大切
 とくに卵を植物性食品になどに置き換えると、死亡リスクは男性で24%、女性で21%、赤身肉では男性で13%、女性で15%、それぞれ低下した。

 対象者の食事に含まれるタンパク質の割合は平均で15%で、そのうち60%が動物性、40%が植物性だった。

 「今回の研究は、植物性食品の摂取を勧める食事ガイドラインを支持するものになりました」と、米国立がん研究所のジアキ ヒュアン氏は言う。

 「動物性食品は良質なタンパク源になりますが、食べ過ぎにはリスクがともないます。植物性食品と良好にバランスをとることが大切です」としている。

Plant protein may protect against type 2 diabetes, meat eaters at greater risk(東フィンランド大学 2017年4月19日)
Intake of different dietary proteins and risk of type 2 diabetes in men: the Kuopio Ischaemic Heart Disease Risk Factor Study(British Journal of Nutrition 2017年3月28日)
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Higher Intake of Plant Protein Compared to Animal Protein Associated with Lower Mortality(米国立がん研究所 2020年7月13日)
Association Between Plant and Animal Protein Intake and Overall and Cause-Specific Mortality(JAMA Internal 2020年7月13日)
Diets high in protein, particularly plant protein, linked to lower risk of death(BMJ 2020年7月22日)
Dietary intake of total, animal, and plant proteins and risk of all cause, cardiovascular, and cancer mortality: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective cohort studies(BMJ 2020年7月22日)