野菜と全粒穀物を食べると糖尿病リスクが低下 食物繊維が善玉の腸内菌を増やす
2020年08月12日
野菜や果物、全粒粉のパンや玄米などの全粒穀物を食べていると、糖尿病のリスクが大きく低下するという研究が発表された。
野菜や果物、全粒穀物を、少しでも食事に加えると、2型糖尿病の予防・改善に役立つとしている。
食物繊維の豊富な全粒穀物が、有益な腸内細菌を増やし、腸内環境を良好にすることも明らかになった。
野菜や果物、全粒穀物を、少しでも食事に加えると、2型糖尿病の予防・改善に役立つとしている。
食物繊維の豊富な全粒穀物が、有益な腸内細菌を増やし、腸内環境を良好にすることも明らかになった。
野菜と全粒穀物が糖尿病リスクを下げる
野菜や果物、全粒粉のパンや玄米などの「全粒穀物」を食べていると、糖尿病のリスクが大きく低下するという2件の研究が、医学誌「BMJ(ブリティッシュ メディカル ジャーナル)」に発表された。
1件目の研究は、英国のケンブリッジ大学などが、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、スウェーデン、英国で実施されている国際的な大規模研究「EPIC-InterAct」研究で得られた成果だ。
研究の対象となったのは、新たに2型糖尿病を発症した9,754人の成人。この研究に先立って実施された「EPIC」研究に参加していた34万234人のうち、追跡期間中に糖尿病を発症しなかった1万3,662人と比較された。
研究グループは、野菜や果物に豊富に含まれるビタミンCとカロテノイドに着目。カロテノイドは野菜などに含まれる、赤や黄色の鮮やかな天然色素だ。これらの血中の値は、野菜や果物をどれだけ摂取しているかを知る目安になる。これは、食事アンケートよりも信頼できる指標になるという。
研究グループは、糖尿病の発症に関わる食事などの生活スタイルや社会的な要因などの影響を調整し、ビタミンCとカロテノイドの血中濃度を取り入れた「複合バイオマーカースコア」を算出した。
野菜と果物を多く食べると糖尿病リスクが50%低下
その結果、このスコアが高いほど、2型糖尿病の発症リスクが低下することが明らかになった。スコアが上位20%にある人は、もっとも低い人に比べ、糖尿病リスクが50%低くなった。
「野菜と果物の総摂取量が1日66g増えるごとに、2型糖尿病の発症リスクは25%低下することが示されました」と、研究グループは結論している。
野菜と果物に含まれるビタミンCとカロテノイドには、活性酸素の有害作用を抑える抗酸化作用があると考えられている。野菜と果物には食物繊維やカリウムなども含まれ、これらが動脈硬化を抑制し、心臓病や脳卒中のリスクを減少させる。
「EPIC-InterAct」研究の過去の報告では、野菜や穀類などから食物繊維を多く摂っている人は、2型糖尿病の発症リスクが低いことも明らかになっている。
糖尿病リスクは、食物繊維の摂取量が1日10g増えるごとに9%低下し、とくに穀類から摂る食物繊維が1日に10g増えるごとに25%低下するという結果が出ている。
全粒穀物(ホールグレイン)が糖質の吸収をゆるやかにする
2件目の研究は、全粒粉のパン、玄米、雑穀米、麦ごはんなどの「全粒穀物」を食べていると、糖尿病のリスクを低く抑えられるという米国の調査報告だ。
「全粒穀物(ホールグレイン)」とは、精白などの処理で、果皮、種皮、胚、胚乳といった部位を取り除いていない穀物で、食物繊維が豊富に含まれている。
食物繊維は消化・吸収されずに、小腸を通って大腸まで達する食品成分。腸の働きをよくしたり、糖質の吸収を遅くし血糖値の急上昇を抑えるなど、多くの健康効果がある。
食物繊維が多い食事は、よく噛むために満腹感が得られやすくなり、食べ過ぎを防いで肥満予防につながる。また、脂質やコレステロールなどの吸収を抑えることで、動脈硬化の予防にもつながる。
全粒穀物を多く食べていると糖尿病リスクが29%低下
野菜、果物、全粒穀物を少し増やすだけでも糖尿病リスクは低下
「2型糖尿病を予防・改善するために、野菜、果物、全粒穀物の摂取量を増やすことが勧められます。毎日の食事でこれらの食品を少し増やすだけでも、糖尿病を改善する効果を得られます」と、研究グループは述べている。
「精製された小麦粉や白米などを食べると、炭水化物の量は同じであっても、食物繊維が少ないため吸収が速く、食後の血糖上昇が起こりやすくなります。とくに血糖値をコントロールする必要のある糖尿病の人に、全粒穀物が勧められます」と、研究者は強調している。
全粒穀物が善玉の腸内細菌を増やして体重と肝臓を改善
東フィンランド大学の研究では、食物繊維が豊富に含まれる全粒穀物が、有益な腸内細菌を増加させ、コレステロール代謝の改善や、腸管のバリア機能の向上、肝臓の炎症抑制、さらには体重増加の抑制につながることが明らかになった。
研究グループは、オーツ麦、ライ麦の食物繊維の摂取による腸内細菌による代謝産物の違いと、宿主の代謝応答への影響を調べた。
マウスを使った実験で、10%のオーツ麦あるいはライ麦を含む食餌を17週間摂取させ、腸内細菌の代謝産物の変化を調べた。その結果、2つの穀物はどちらも有益な腸内細菌の増加を助け、腸内環境を良好にすることが示された。
オーツ麦はラクトバチルス属の菌を増加させ、ライ麦はビフィドバクテリウム属が増加させた。いずれの穀物も多くの短鎖脂肪酸を産生し、腸が健康になり、肝臓の炎症を抑制し、腸でのトリプトファン代謝を調整した。さらにオーツ麦とライ麦はどちらも、高脂肪食による体重増加を抑制した。
「全粒穀物が、有益な腸内細菌を増加させ、肥満、メタボリックシンドローム、循環器疾患、2型糖尿病などのリスクを低下させことは、これまでの多くの研究でも示されています。食物繊維が腸内細菌の機能を変え、腸内環境を良好な状態にすると考えられます」と、研究者は述べている。
Higher fruit, vegetable and whole grain intake linked to lower risk of diabetes(BMJ 2020年7月8日)Association of plasma biomarkers of fruit and vegetable intake with incident type 2 diabetes: EPIC-InterAct case-cohort study in eight European countries(BMJ 2020年7月8日)
Intake of whole grain foods and risk of type 2 diabetes: results from three prospective cohort studies(BMJ 2020年7月8日)
Increasing dietary fibre may reduce the risk of developing diabetes(ケンブリッジ大学 2015年5月27日)
Oat and rye bran fibres alter gut microbiota, reducing weight gain and hepatic inflammation(東フィンランド大学 2020年7月2日)
Dietary Fiber from Oat and Rye Brans Ameliorate Western Diet-Induced Body Weight Gain and Hepatic Inflammation by the Modulation of Short‐Chain Fatty Acids, Bile Acids, and Tryptophan Metabolism(Molecular Nutrition & Food Research 2020年6月11日)
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