テレビ視聴が肥満の原因に 30歳代の生活スタイルが中年以降に影響

 テレビを見る時間が長くなるほど、体格指数(BMI)と腹囲周囲径が増えやすい傾向がある。特に若い頃からそうした習慣があると、年齢を重ねるにつれ肥満が増えていくことが、3,269人の若年者を20年間追跡して調査した研究で明らかになった。
テレビの視聴時間が長くなると肥満が増える
 米国のピッツバーグ大学の研究チームは、「若年者の冠状動脈疾患の発症リスクの研究」(CARDIA研究)に参加した、バーミンガム、アラバマ、シカゴ、ミネアポリス、オークランド、カリフォルニアに在住していた3,269人の若年者を調査した。参加者は、1990年(30歳時)から20年間、テレビ視聴時間、体重、体格指数(BMI)、腹囲周囲径などを5年ごとに調べられた。

 15年間のテレビの視聴時間の平均は2.4時間だった。参加者のうち男性の23%と女性の20.6%が、毎日4時間以上テレビを視聴していた。テレビの視聴時間と身体活動には相関関係があり、ベースライン時に視聴時間が4時間を超えていた人では、1時間未満の人に比べ、身体活動スコアが25%低下していた。

 BMIの平均は5年後、10年後、15年後、20年後にそれぞれ25.9、27.2、28.5、29.1と、時間が経過するにつれ上昇していった。参加者が30歳の時、より多くの時間をテレビ視聴に費やした人は、より少ない時間を費やした人と比較して、5年後以降に肥満になる傾向が強まることが判明した。

 「テレビの視聴時間が長くなると肥満が増える傾向が中高年でみられることは過去の研究で示されています。今回の研究では、その傾向は若年者でより顕著であることが明らかになりました」と、ピッツバーグ大学公衆衛生学部のアンソニー ファビオ氏は言う。

 若年者の生活スタイルは、テレビ放送の内容により影響を受けやすい可能性がある。テレビでは高カロリーの栄養価の低いジャンクフードの広告が多く放送されている。「若者はテレビで放送されるジャンクフードの広告の誘惑にかられやすく、不健康な食品を摂取しやすい可能性があります。テレビの視聴時間が増えると、運動不足が増える傾向もあります」と、ファビオ氏は指摘する。

若い時ほどテレビの視聴時間を気にした方が良い
 健康増進に対する意識をもつのは若い時には難しい。年齢を重ねるにつれ、肥満や糖尿病などの生活習慣病が増えていくことを、若者は認識しにくい。実際にCARDIA研究では、年齢が上昇するとともに、健康的な食品を食べる傾向が高まり、運動習慣も増えていくことが示されている。

 テレビ視聴に代表される不活発な生活スタイルと肥満の両方が、世界的に急速に増えている。テレビ視聴の時間を少しでも減らして、健康的な食事と運動習慣を心がけることは、公衆衛生上の改善につながる可能性がある。

 「今回の研究では、テレビ視聴を減らすための介入すべきもっとも重要ターゲットは、若年者であることが示されました。健康的な生活スタイルを身に付けるための行動変容は、早期年齢で開始する必要があります」と、ファビオ氏は述べている。

TV Viewing Linked to Obesity and Violence, Pitt Public Health Determines in Two Separate Studies(ピッツバーグ大学 2015年8月31日)