乳がんリスクを下げる対策法 座ったまま過ごす時間を減らし運動を

 女性は座ったまま過ごす時間を減らすと、乳がんなどのリスクを下げられることか、米国の大規模研究で明らかになった。カナダの研究では、ウォーキングなどの運動を週に5時間行うと、乳がんを予防する効果が高まることが判明した。
座ったまま過ごす時間が長い女性はがんの発症リスクが高い
 余暇時間に座ったまま過ごす時間が長い女性は、乳がんなどの発症リスクが高くなるという調査結果が発表された。余暇時間に座ったまま過ごす時間を1日に3時間以下に減らすと、がんリスクを下げられるという。

 調査は、余暇時間のうち座ったまま過ごす時間が6時間以上の女性は、3時間以下の女性に比べ、浸潤性乳がんの発症リスクが10%、卵巣がんの発症リスクが43%、多発性骨髄腫の発症リスクが65%、全部位のがんの発症リスクが10%、それぞれ上昇するという結果になった。

 「乳がんなどを予防するめたに、女性は座ったまま過ごす時間をなるべく減らし、ウォーキングなどの運動をするべきです」と、米国がん学会のアルパ パテール氏は強調している。

座ったまま過ごす時間を減らす工夫
 パテール氏は、座ったまま過ごす時間を減らす工夫として、次のことを生活に取り入れるようアドバイスしている――
▽洗濯などの家事は立って行う
▽電話をするときは立ち上がる
▽テレビのコマーシャル時間に立ち上がる
▽駐車場に車を停めるときは、目的地からなるべく離れた場所を選び歩くようにする
▽もしも会社などで責任のある立場にあるのなら、短いミーティングは立って行うようにする
▽仕事の合間に1~2分立って過ごす時間をとり、休憩時間にはウォーキングをする

 研究チームは、米国で実施されている大規模調査「がん予防研究II」のデータを解析した。調査には7万7,462人の女性と、6万9,260人の男性が参加した。平均して女性は15.8年、男性は13.2年間、追跡して調査し、1992~2009年に1万2,236人の女性と1万8,555人の男性ががんと診断された。

週に5時間の運動を続けると乳がん予防の効果を得られる
 女性が運動を習慣として行えば、乳がんの発症リスクを減らすことができることが多くの研究で確かめられている。しかし、どれだけの運動をすれば効果があるのははっきりしていない。

 米国がん学会は、ウォーキングなどの適度な運動を週に150分以上、あるいは筋力トレーニングなどを取り入れた高強度の運動を75分行うことを奨励している。

 しかし、実際にはその2倍の時間である300分(5時間)の運動を週に行うと、乳がんを予防するためにさらに効果的という研究が発表された。

 この研究は、カナダで実施されている「アルバータがん研究」の一環として行われた。研究チームは、閉経後の50~74歳の女性384人を1年間追跡して調査した。

 参加者を、ウォーキングなどの運動を週に150分行うグループと、300分に行うグループに分け比較した。

 その結果、乳がんの発症リスクは、週に150分の運動を行ったグループでは4.6%低下したのに対し、300分の運動を行ったグループでは6.9%低下した。

内臓脂肪を減らせばがんリスクを下げられる
 「アディポネクチン」は脂肪細胞から分泌される生理活性物質(アディポサイトカイン)のうち善玉物質のひとつ。また、「レプチン」は脂肪を燃やし、エネルギーの消費を促す作用のあるアディポサイトカインだ。

 アディポネクチンとレプチンは、がんの発症に影響していると考えられている。内臓脂肪が増えると、これらのアディポサイトカインの分泌量が相対的に減ったり、働きが悪くなったりしてしまう。

 「閉経後の女性は肥満になりやすく、肥満は乳がんのリスクを高めます。週に300分の運動を行った女性では、内臓脂肪が減り、がん予防の効果のある生理活性物質が増えていました」と、アルバータ医療サービスのクリスティーン フリーデンライヒ氏は説明する。

 「乳がんを予防するために、閉経を迎えた女性は、ウォーキングなどの運動を週に300分、1日平均40分行うことが勧められます」とアドバイスしている。

Sitting Too Much Increases Cancer Risk in Women(米国がん学会 2015年7月16日)
Leisure-time spent sitting and site-specific cancer incidence in a large US cohort(Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention 2015年6月30日)
Effects of a High vs Moderate Volume of Aerobic Exercise on Adiposity Outcomes in Postmenopausal Women: A Randomized Clinical Trial(JAMA Oncology 2015年7月16日)