糖分を1日5%以下に制限 肥満や虫歯の原因に WHOが指針を発表

 世界保健機関(WHO)は、肥満や虫歯を防止するため、糖分の1日当たり摂取量を総エネルギー摂取量の5%以下に抑えるのが望ましいとするガイドラインを発表した。平均的な成人の場合、ティースプーンでおよそ砂糖6杯分に相当する。
「非感染性疾患」(NCD)の世界的な増加が背景
 WHOは1989年にはじめて、糖分を総エネルギー摂取量の10%以下に減らすことを推奨したが、新しいガイドイランでは5%以下とより厳しくなった。

 この場合の「糖分」は、コーヒーなどに入れるテーブルシュガーや、ジュースや清涼飲料などに含まれるブドウ糖やフルクトースなどの単糖類や、ショ糖などの二糖類を含む。野菜や果物などに含まれる糖分は対象としないという。

 1日に2,000kcalを摂取する平均的な成人の場合、「5%」の糖分は25g、ティースプーンでおよそ6杯分に相当するという。

 ガイドライン改訂の背景として、糖尿病、心筋梗塞や脳卒中などの心臓血管病、がん、ぜんそくや肺気腫などの肺疾患などの「非感染性疾患」(NCD)の世界的な増加が挙げられている。

 NCDと食生活は密接な関連があり、エネルギーの摂り過ぎによる肥満が増えると、NCDの発症が増えるとみられている。

 2020年までに、NCDによる死亡が全死亡の75%を占めようになると予測されている。WHOは2025年までに、NCDによる死亡を25%減らすことを目標に掲げている。

糖分を減らせば肥満や虫歯を減らせる
 「糖分の摂取を総エネルギー摂取量の5%以下に保てば、肥満や過体重、虫歯のリスクを減らせるという確かなエビデンスがある」と、WHOの栄養・健康増進部のディレクターのフランチェスコ ブランカ博士は会見で発表した。

 糖分を制限するのを推奨する理由は、(1)「糖分の摂取量が少ない成人は、より体重が少ない」、(2)「糖分を増やすと体重増加につながる」。糖分の多い高カロリーの清涼飲料を多く飲む子ども、あまり飲まない子どもに比べ、肥満が少ないとう調査結果がある。

 糖分の摂取が総エネルギー摂取量の10%未満であると、う蝕(虫歯)になる割合が減るという調査結果もある。

 第2次世界大戦の終結直後の1946年の調査では、成人の糖分の摂取量は総エネルギー摂取量の5%を下まわっていた。戦争が始まる前は、平均して1人15kgを摂取していたが、終戦直後には0.2kgに減っていた。その結果、虫歯が劇的に減少したという。

多くの加工食品に糖分が含まれる 清涼飲料に砂糖10杯分
 世界中で消費される多くの加工食品に糖分は含まれており、たとえばケチャップ大サジ1杯には糖分がおよそ4g(ティースプーン1杯分)、コーラなどのソフトドリンクには最大で40g(10杯分)が含まれている。

 成人の糖分の摂取量の平均は国によって異なり、欧州ではハンガリーやノルウェーなどでは総エネルギー摂取量の7~8%程度で、スペインや英国では16~17%程度だという。

 子どもはどの国でも糖分の摂取量が多い傾向にあり、デンマーク、スロベニアスウェーデンでは12%で、ポルトガルでは25%に上る。

 都市と地方でも差があり、南アフリカの都市部では10.3%程度だが、地方では7.5%まで下がる。

 「ガイドイランを変更することで、NCDの発症が減り、世界中で医療負担を減らせる可能性がある。政府や食品メーカーなどは、新しいガイドラインを参考に方針を見直して欲しい」と、ブランカ博士は強調した。

WHO calls on countries to reduce sugars intake among adults and children(世界保健機関 2015年3月4日)
Sugars intake for adult and children(世界保健機関)