不健康な食事スタイルが20年で増加 世界の食事・栄養の最新事情

 世界の多くの地域で、この20年で野菜や果物などの健康的な食品の消費が増えたが、加工肉や高カロリー飲料などの不健康な食品の消費はそれを上回る勢いで増えていることが、世界187ヵ国の45億人を対象とした調査研究で明らかになった。

 研究は、英国のケンブリッジ大学などの研究チームによるもので、英国の国立医療研究機関であるMRCやビル&メリンダ・ゲイツ財団などから資金提供を受けて行われた。研究チームは世界中で実施されている300件以上の栄養調査の解析を行った。

先進国と途上国の差が縮まりつつある
 研究チームは健康的な食品に関して、▽野菜、▽果物、▽豆類、▽ナッツ類、▽全粒粉、▽牛乳、▽魚介類、▽不飽和脂肪酸、▽オメガ3脂肪酸、▽食物繊維という10のポイントにもとづき、世界各国を比較した。これらの健康な食品が多く摂取しているほど食事のスコアは加点される。

 一方で、不健康な食品に関して、▽未加工肉、▽加工肉、▽糖分の多い清涼飲料、▽飽和脂肪酸、▽トランス脂肪酸、▽コレステロール、▽塩分という7つのポイントで採点した。

 その結果、食事スタイルは国民所得によって差があるが、食事の質の観点からみると、先進国と低・中所得国の差は縮まってきていることが判明した。

 米国、カナダ、欧州、オーストラリア、ニュージーランドなどの高所得国では、加工食品や高カロリーの飲料や食品の消費が増え、食事の質は目立って低下している。

 健康的な食事のスコアが高かったのは、地中海式ダイエットの伝統が守られている欧州のギリシャやトルコなどの一部の地域に限られる。

 日本については、先進国の中でも食事の栄養バランスは優れているが、全体に塩分を摂り過ぎており、加工食品の利用が多いなど、いくつかの課題が挙げられた。

 先進国では、加工食品の消費が増え、不健康な食事スタイルが広まっており、先進国と低・中所得国の差は33ポイントに拡大している。この傾向は、先進国から低・中所得国へと移りつつあるという。

 例えば、サハラ以南のアフリカ諸国と、中国やインドなどのアジア諸国では、20年にわたり不健康な食事のスコアは上昇していないが、健康的な食事のスコアも向上していない。

不健康な食事が肥満や糖尿病などを引き起こす
 糖尿病、心筋梗塞や脳卒中などの心臓血管病、がん、ぜんそくや肺気腫などの肺疾患などの「非感染性疾患」(NCD)が世界的に増えている。2020年までに、NCDによる死亡が全死亡の75%を占めようになると予測されている。

 「NCDと関わりが深いのが食生活です。NCDを減らすために、健康的な食事を増やす必要があります。各国の政府や保健機関はこのことをしっかり受けとめて、食事が健康的な生活スタイルを決定するという認知を社会に拡げるべきです」と、ケンブリッジ大学の今村文昭氏は言う。

 世界的な傾向としてもっとも目立っているのは肥満の増加だ。肥満は多くのNCDを引き起こし、不健康な食事と運動不足が大きく影響している。「肥満を予防・改善するための食事スタイルを世界規模で拡大することが、当面の大きな課題となっています」と、今村氏は指摘する。

 「先進国と途上国の両方で、伝統的な食事スタイルが失われ、代わりに不健康な食事スタイルが定着している傾向が示されました。これらの変化は20年という短い期間に急速に進展しました。食事の問題は環境にも影響をもたらします。世界規模で情報を収集する必要があります」と述べている。

Unhealthy eating habits outpacing healthy eating patterns in most world regions(Medical Research Council 2015年2月18日)
Dietary quality among men and women in 187 countries in 1990 and 2010: a systematic assessment(Lancet Global Health 2015年2月18日)