テレワーク中の生活の注意
―新型コロナウイルス感染症対策に役立つ肥満予防の知恵―

坂根 直樹
日本肥満症予防協会 理事
京都医療センター 予防医学研究室 室長

 体重を気にしている人でも新型コロナウイルス感染症予防のために、仕事がテレワークとなったり、不要不急の外出を避けるために、どうしても運動不足となりがちです。そして、家に閉じこもり気味になると、 目の前にある美味しそうな物をついついつまみがちになります。その結果、「以前と比べて体重が増えてきた」と言う患者さんがいます。中には、「免疫力を高めるために頑張って食べている」という人もいますが、 これは肥満の人では感染症対策にはならず、逆効果となります。

 海外での報告によると新型コロナウイルス感染症の重症化には、どうも肥満が関係しているようです。特に、60歳未満ではその傾向が強いようです。体重が増えると、糖尿病や睡眠時無呼吸などの病気に なりやすいことは知られていますが、それらの病気によってウイルスに対する免疫力が低下し、感染症になりやすくなることが考えられています。さらに、脂肪細胞にはACE2という蛋白質が肺よりも 多く発現しているのですが、このACE2は、新型コロナウイルスのヒトへの侵入と関係しています。

 肥満の人は、脂肪細胞のACE2の量が多いので、新型コロナウイルスに侵入されやすいのかもしれません。 他にも、脂肪細胞はアデノやインフルエンザなどのウイルスに感染しやすく、肺など他の臓器にウイルスを供給している可能性があるとも考えられています。つまり、肥満自体がウイルス感染と関係しているわけですね。

 それでは、どんな対策をすればよいのでしょうか。換気の悪い密閉空間(むんむん)、多数が集まる密集場所(ぎゅうぎゅう)、間近で会話や発生をする密接場面(がやがや)の「三密」を避けることはもちろんですが、肥満を予防しておくことが 新型コロナウイルス対策に役立つかもしれません。

 表1に肥満者が陥りやすい罠とその対策をまとめてみました。但し、極端なダイエットは感染に対する免疫力を低下させるので禁物です。むしろ、余分な物を食べずに家で何か運動して、 緩やかなダイエットに挑戦してみて下さい。

表1.新型コロナウイルス感染症予防に役立つ肥満予防の知恵

分 類 肥満者が陥りやすい罠 その対策
運 動 外で運動できない 家の中で運動する
テレビばかり見ている ラジオ体操やテレビ体操をする
運動不足である 歩数計を装着する
家でゴロゴロしている 家の中を隅々まで掃除する
テレワークとなった(通勤徒歩なし) その時間帯に運動する
食 事 何もすることがないので食べる お菓子を隠しておく(緊急用として)
ついついおやつを食べる おやつ日記をつける
体重が増えてきた 朝と晩に体重計にのる

(2020年04月)