特定保健指導でのオンライン面接は対面面接と比べて効果は劣らない オンラインの活用可能性が広がる結果に

 帝京大学などの研究グループは、2020年度に特定保健指導を受けた1,431人のデータをもとに、「オンライン面接」と「対面面接」の方法別に、翌年のBMI(体格指数)の変化を比較した。

 その結果、オンライン面接のBMIに対する減量効果は、対面面接に比べ劣っていない可能性が示された。

 「特定保健指導においてオンライン面接でも減量効果は変わりないことが示唆されたことから、オンライン面接の活用可能性を広げられると考えられます」と、研究者は述べている。

オンライン面接は対面面接に比べ減量効果は劣っていない

 コロナ禍では社会全体でデジタル化が進められ、テレワークやWeb会議、オンライン授業などが増え、特定保健指導でもオンライン面接が急激に増えた。しかし、対面面接に比べて減量効果が劣らないかはかは不明だった。

 そこで、帝京大学などの研究グループは、2020年度に特定保健指導を受けた1,431人のデータをもとに、面接方法別に翌年のBMI(体格指数)の変化を比較した。

 その結果、対面面接に比べオンライン面接のBMIの変化は0.014ほど多く減量しており、オンライン面接は対面面接に比べ劣っていないことを明らかにした。

 「特定保健指導には、対面だけでなく、オンラインを活用していくことも有用である可能性が示されました」と、研究者は述べている。

 研究は、帝京大学大学院公衆衛生学研究科の金森悟准教授らによるもの。研究成果は、「Journal of Occupational Health」で早期公開された。

面接方法別の1年後のBMIの変化
オンライン面接は対面面接に比べ、BMI減少量は劣っていないと許容できる範囲にあることが示された

赤色の破線は、この基準を下回ると対面面接と比べてBMIの減少量が劣っていないと許容できる上限を意味する
年齢・性別・本社所在地・企業規模・保健指導区分・収縮期血圧・肝機能・脂質・HbA1c・喫煙・運動・飲酒頻度を考慮し分析を実施
(n=1,431)
出典:帝京大学、2024年

2020年度に特定保健指導を受けた1,431人のデータを解析

 研究グループは今回、デパート健康保険組合に加入する被保険者を対象に、特定健康診査・特定保健指導に関するデータを用いた縦断研究を実施した。

 対象者となったのは、2020年度の特定健康診査で積極的支援または動機づけ支援に該当し、2020年度にオンライン面接または対面面接を受けた者、さらに、2020年度に2019年度の特定健康診査の結果をもとにした対面面接またはオンライン面接を受けた者を合計した1,936人。

 これらのうち、次年度の特定健康診査を未受診の者等を除外した1,431人を解析した。調査項目は、ベースライン時の基本属性と面接方法、問診項目を含む特定健康診査の結果、およびフォローアップ時のBMIとした。

 目的変数をBMIの変化、説明変数を面接方法とし、傾向スコアを用いた逆確率重み付け推定法を行った。非劣性マージン(対面面接と比べてBMIの減少量が劣っていないと許容できる上限)は先行研究にもとづき0.175とした。

 対面面接群は976人(68.2%)、オンライン面接群は455人(31.8%)だった。対面面接群は平均年齢51.1歳、男性491人(50.3%)、オンライン面接群は平均年齢49.9歳、男性214人(47.0%)だった。

特定保健指導でのオンライン面接の活用を広げるきっかけに

 その結果、1年間のBMIの変化は、対面面接群ではベースライン時の27.61から1年後に27.42、オンライン面接群では27.68から27.48に減少した。

 オンライン面接は対面面接に比べ、BMIの変化量が0.014ほど多く減量していたが、統計学的には有意な差ではなかった(p=.847)。

 またこの際に、統計学的に算出した信頼区間の上限は、事前に検討した非劣性マージンを下回っていた。

 「オンライン面接のBMIに対する減量効果は、対面面接よりも劣っていない可能性が高いことが明らかになりました」と、研究者は述べている。

 「特定保健指導においてオンライン面接でも減量効果は変わりないことが示唆されたことから、オンライン面接の活用可能性を広げることができると考えられます」としている。

帝京大学大学院公衆衛生学研究科
face versus online counseling for specific health guidance: a non-inferiority prospective observational study (Journal of Occupational Health 2024年5月10日)