高齢者の介護予防では身体機能の維持・向上がポイントに 男性では骨格筋量、女性では脂肪量
2022年04月22日
高齢者の介護予防では、骨格筋量・脂肪量が多い/少ないに関わらず、まずは身体機能の維持・向上を一次予防のターゲットとするべきであることが、東京都健康長寿医療センターの調査で明らかになった。
一方、余命延伸の観点では、身体機能の維持・向上だけでなく、男性では骨格筋量の減少、女性では脂肪量の減少による、"やせ"にも注意を払う必要があるという。
やせ型の日本人高齢者を対象に身体組成と身体機能の影響を調査
高齢期の身体組成(骨格筋量・脂肪量)や、身体機能(筋力・歩行能力)は、要介護化や余命に対して異なる影響をもつと考えられている。しかし、それぞれの指標の健康予後に対する独立した影響やその関連については、十分に検討されておらず、とくに欧米人に比べやせ型である日本人を対象としたデータは不足している。 そこで東京都健康長寿医療センターは、日本人高齢者の身体組成(骨格筋量・脂肪量)と身体機能(握力・歩行能力)が要介護化・余命に及ぼす独立した影響を、量・反応分析によって検討した。 その結果、次のことが明らかになった――。- 要介護化(要支援・要介護状態の新規発生)には、男女一貫して、身体組成(骨格筋量・脂肪量)よりも、身体機能(握力・歩行能力)が強く影響する。
- 余命には、男性では骨格筋量・女性では脂肪量が、それぞれ身体機能とは独立して影響する。
高齢者健診受診者1,765人を追跡調査
研究グループは、群馬県と埼玉県の高齢者健診受診者1,765人(男性862人、女性903人、平均年齢72歳)を対象に、平均5.7年(最大9.5年)の追跡調査を行った。 身体組成指標として、(1) 骨格筋指数(四肢の筋肉量を身長の2乗で除したもの)、(2) 脂肪指数(全身の脂肪量を身長の2乗で除したもの)を、身体機能指標として、(3) 握力、(4) 通常歩行速度、をそれぞれ評価し、これら4指標と新規要支援・要介護認定および総死亡との関連形状を分析した。 今回の研究では、骨格筋量は四肢(両腕・両脚)を測定し、体内に微弱な電流を流し、体水分量から筋肉量や体脂肪量などを間接的に求める生体電気インピーダンス法を採用した。 その結果、男女とも一貫して、骨格筋量や脂肪量に関わらず、筋力・歩行能力が高いほど要介護状態になりにくく、低いほどなりやすいという関係性が明示された。 一方、余命にも筋力・歩行能力が強く影響するものの、これらとは独立して、男性では、骨格筋量が多いほど余命が長いという正の関係性がみられた。女性では、脂肪量が高値であっても余命に有意な影響はなかったものの、脂肪量が少ないほど余命が短いという関係性が示された。出典:東京都健康長寿医療センター研究所、2022年
高齢者では、筋力・歩行能力の保持と、骨格筋量・脂肪量の減少に注意
「研究結果から、高齢期の介護予防では、骨格筋量・脂肪量が多い/少ないに関わらず、まずは身体機能の維持・向上を一次予防のターゲットと据えるべきであることが明確になりました。すなわち、定期的な筋力運動などの実践によって、日常生活動作を円滑に遂行できるよう筋力や歩行能力を保持しておくことが重要です」と、研究グループでは述べている。 一方、「余命延伸の観点では、身体機能の維持・向上だけでなく、骨格筋量(男性)や脂肪量(女性)の減少による"やせ"にも注意を払う必要があります。これには、運動実践と、タンパク質をはじめとした多様な食品の摂取を組み合わせることが重要です」している。 同研究所の研究チームでは、独自に「フレイル予防応援コンテンツ」を制作し、ホームページで公開している。筋力運動・食習慣に関するチェック表や、これらの具体的な実践のためのテキスト・動画などが収められている。「日々の健康づくりにぜひご活用ください」と述べている。
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