骨粗鬆症にご注意 50歳以上の女性の3人に1人が骨折を経験 40歳過ぎたら骨を強くする対策を


 10月の「世界骨粗鬆症デー」に、「世界から骨粗鬆症による骨折をなくす」ことを目標に、世界規模で啓発活動が展開された。
 骨の健康が脅かされている人は世界的に多いにも関わらず、有病者の80%は骨粗鬆症についての診断や治療を受けていないとみられている。
50歳以上の女性の3人に1人と、男性の5人に1人が骨折
 骨粗鬆症は、骨が弱く壊れやすくなり、ちょっとした転倒やぶつかったりなどで、骨折してしまう病気。骨がスカスカの状態になると、ちょっと尻もちをついたり、重いものを持ち上げたりしただけでも骨折してしまうことがある。

 国際骨粗鬆症財団(IOF)によると、世界で50歳以上の女性の3人に1人と、男性の5人に1人が、骨折を経験している。骨粗鬆症によって引き起こされる骨折は、生命を脅かすおそれがあり、痛みや長期的な障害の原因になる。

 骨粗鬆症による骨折を経験した患者のうち、骨粗鬆症の診断と治療を受けていたのは、わずか20%だったという報告がある。欧州でも2010年には、骨粗鬆症による骨折のリスクが高いとみられる人でも1,230万人が治療を受けていなかった。

 骨粗鬆症財団によると、日本でも骨粗鬆症の有病者数は1,100万人に上ると推定されている。以前は高齢者に多い病気だとみられていたが、若い人でも過度のダイエットによるカルシウム不足などが原因で発症するリスクがある。

 肥満・メタボ、2型糖尿病などのある人は、骨の強度が低下して、骨粗鬆症を発症するリスクが高いことが知られている。

 「骨の健康が脅かされている人は世界的に多いにも関わらず、患者さんの80%は骨粗鬆症についての診断や治療を受けていないとみられています。骨粗鬆症が引き起こす骨折は、痛みや障害、自立した生活をおくるのを妨げる原因になります。リスクの高い人は医師に相談して、適切な診断と治療を受けてください」と、英国のサウサンプトン大学医学部のサイラス クーパー教授は言う。

健康な毎日を支えているのは骨の密度です
骨粗鬆症財団が公開しているビデオ

骨粗鬆症や骨折のリスクを減らす5つの方法
 国際骨粗鬆症財団によると、早期から対策することで、骨粗鬆症や骨折を防ぐことは可能だ。そのためには、下記の生活スタイルが大切になる。

運動・身体活動をする

 骨と筋肉を動かす運動を習慣として行うと、体重コントロールに役立ち、筋力を強くし、バランス能力も鍛えられる。
 骨量を増やすために効果的なのは、骨に衝撃や荷重を伝えるような運動。骨に衝撃を与えることで、新しい骨を作る骨芽細胞の働きが活発になる。ウォーキングや軽いジョギング、ダンスなどは効果的だ。
 毎日座ったままの時間が長い人は、骨が弱くなっているおそれがあるので、とくに注意が必要となる。

健康的な食事

 毎日の食事で骨を健康に保つために必要な栄養が摂れているかを確認する。とくにカルシウム、ビタミンD、タンパク質は、骨を丈夫にするために必要だ。
 カルシウムは、牛乳やチーズなどの乳製品、豆腐や納豆などの大豆食品、小松菜などの緑黄色野菜、ひじきなどの海藻、魚などに多く含まれる。
 丈夫な骨をつくるために、ビタミンDも不可欠だ。ビタミンDの不足を防ぐには、それを多く含む食品を積極的に摂るとともに、日光を浴びることが大切。日光に当たることで、ビタミンDの合成が促進される。

生活スタイルを見直す

 健康的な体重を維持し、喫煙や過度の飲酒などの不健康な習慣は改善する。
 過度のダイエットで体重を短期間に減らした人も、カルシウムなどの栄養素が不足しやすく、骨が弱くなりやすいので注意が必要になる。
 また、身長が若い頃に比べ2cm以上低下したり、猫背になっている人は、骨粗鬆症のリスクが高い場合がある。気になる人は医師に相談しよう。

骨粗鬆症のリスクを確認

 以前に骨折したことがあったり、骨粗鬆症の家族歴がある、骨の健康に影響を与えるステロイド系の抗炎症薬などの特定の薬を服用している人は、骨粗鬆症のリスクがとくに高い場合がある。
 また、女性ホルモンには骨密度を保つ働きがある。女性は、閉経を機に女性ホルモンの分泌量が減少するため、骨量が減少しやすい。
 思いあたることがある人は、かかりつけの医師に相談しよう。

糖尿病や腎臓病などのある人

 インスリンには骨芽細胞を増やす作用があるが、糖尿病になるとインスリンの働きが低下することがある。そうなると、骨芽細胞が不足し、骨を作る働きが低下する。
 また、慢性腎臓病があると、ビタミンDの活性化が低下し、血液中のカルシウム不足を補うために骨からカルシウムが溶け出し、骨量が減少してしまう場合がある。

骨粗鬆症は治療できる

 骨折リスクが高い場合には、骨粗鬆症によるリスクを効果的に低下できる薬物療法がある。治療により、骨密度を高めて骨折のリスクを減らすことができる。治療は進歩しており、骨折リスクの状況に応じて患者1人ひとりに合わせて行えるようになっている。
 骨粗鬆症による骨折を防ぐには、検査により早期発見し、対処することが大切。骨の量の目安となる「骨密度」を調べるには、DXA[デキサ]法と呼ばれる、骨密度を測定する検査がある。気になる人は医師に相談し、検査を依頼してみよう。
 DXA法では、エックス線を使って骨密度を測定する。被ばくの度合いは少なく、非侵襲で手早く検査を受けられる。全身用の機器を使うと体のほとんどの骨の測定ができ、前腕部で測定を行う機器もある。

骨粗しょう症リスクチェック(国際骨粗鬆症財団)

 骨粗鬆症と骨折のリスクを理解していますか?
 自分でできる簡単なリスクチェックをしてみましょう
転倒のリスクを減らすための対策
 骨粗鬆症により、骨が弱く壊れやすくなっている人は、軽度の転倒でも骨折してしまうおそれがある。そのため予防が大切になる。

 国際骨粗鬆症財団によると、転倒の事故はありふれたもので、65歳以上の成人の30%が毎年転倒し、10~15%が負傷している。

 とくに大腿骨を骨折すると、自立した生活をするのが難しくなり、高齢者では寝たきりにつながることも少なくない。転倒のリスクを減らすための対策が必要だ。

転倒防止に役立つ運動プログラム

 転倒のリスクを減らすために必要なのは、筋肉を強くしバランス能力を維持することだ。運動は筋肉の力を強め、バランスを改善するのに効果的なので、週に2~3日以上行うのが望ましい。

バランス運動

 太極拳、ヨガ、ピラティス、ダンスなどのエクササイズは、バランス能力を高めるのに効果的だ。かかとを上げて、つま先に重心を移して歩いてみたり、片足で立ってみるといった簡単なエクササイズでも、バランスを改善するのに役立つ。

筋肉強化のためのレジスタンス運動

 ウォーキングなどの有酸素運動とレジスタンス運動(筋力トレーニング)を組み合わせて行うことが勧められる。レジスタンス運動は、スポーツ施設などの専用器具を使ったものだけでなく、室内の小さなスペースでも簡単に行うことができる。
 市販のゴムバンドを使った運動や、スクワットは簡単にできて効果的だ。椅子や手すりにつかまり、片方の脚を前のほうに上げ、1分間静止する。続いて、もう片方の脚を上げて同じく1分静止する。こんな簡単な運動でも、1日に数回行うと効果がある。

音楽ベースのマルチタスク運動

 1つの作業を行うのがシングルタスクであるのに対し、2つ以上の作業を同時に行うのがマルチタスク。音楽を聴きながらそれに合わせて全身を動かす、音楽に合わせながらウォーキングをするなど、2つ以上の動作を同時にすることで瞬時の判断や行動を行いやすくなり、転倒予防につながる。
 マルチタスクを用いたトレーニングは、脳の体を動かす部分を活性化させるので、認知症予防にも有用とされている。

High Bone Mineral Density and Fracture Risk in Type 2 Diabetes as Skeletal Complications of Inadequate Glucose Control: The Rotterdam Study(Diabetes Care 2013年6月)

国際骨粗鬆症財団

公益財団法人 骨粗鬆症財団