心房細動による脳梗塞はなぜ女性に多い? 女性の脳梗塞のリスクを評価

 心房細動による脳梗塞のリスクは、男性よりも女性の方が高いことが知られているが、そのメカニズムのひとつを群馬大学などの研究チームが明らかにした。
心臓で血流がよどむと血栓ができやすい
 心房細動は、心房の収縮が不規則になり、細かく震えるようになる不整脈。心房細動になると心房の中で血液がよどむようになり、固まりやすくなり、徐々に大きな血栓(フィブリン血栓)が作られる。

 この血栓がはがれて、血流に乗って脳に運ばれると脳の血管に詰まって脳梗塞を引き起こす。

 心房細動が原因でできる血栓は大きいものが多く、重症になりやすいのが大きな特徴だ。心臓は4つの部屋に分かれており、血栓は左心房にできやすい。

 さらに心房細動が48時間以上持続したり、高血圧・糖尿病の患者や高齢者では、心機能が低下することが多く、心臓の中で血液の流れの遅いところが出てくると血栓ができやすいことが知られている。

女性は左心房の機能が低下し、血栓ができやすい
 研究は、群馬大学の倉林正彦教授らが、オーストラリアのタスマニア大学と共同で行ったもの。医学雑誌 Circulation: Cardiovascular Imaging」オンライン版に発表された。

 共同チームは、心房細動を起こした男女414人(男性258人、女性156人)を対象に、心臓超音波検査のデータを詳細に解析し、左心房の機能を検討した。

 脳梗塞のリスクは、対象患者の過去の病歴などを元に算出した。そして、左心房の機能と脳梗塞リスクとを男女別に比較した。

 その結果、女性は男性に比べて年齢が高く、左心房の拡大がみられた。そして、女性は男性に比べ、脳梗塞のリスクが上がれば上がるほど、左心房の機能が低下することが分かった。

 左心房の機能が低下すれば、そこに脳梗塞の原因となる血栓ができやすくなるため、これが今まで知られていなかったメカニズムのひとつと考えられるとしている。
心房細動の治療の目的は脳梗塞の予防
 心房細動による脳梗塞を防ぐために、「問診による脳梗塞のリスク評価に加え、心エコーで左心房機能を評価することが重要」と、研究チームは述べている。

 効果的なのは「心臓CT検査」だ。心臓CT検査では、カテーテルを使用せず、造影剤を注射することで冠動脈の評価が可能になり、心臓の冠動脈の走行、狭窄を評価することができる。心臓CT検査によって、心臓の構造に含め機能や血流も分かるなど、多くの情報を得られるようになった。

 心房細動の治療の最大の目的は、脳梗塞を予防することだ。現状の診療ガイドラインでは、「脳梗塞や出血のリスク評価にもとづいた抗凝固療法の実施」が推奨されている。
抗凝固薬を使って脳梗塞を予防
 心房細動がある場合の治療では、血液を固まりにくくする抗凝固薬を使って脳梗塞を予防する。抗凝固薬はかつてはワルファリンだけだったが、最近の5年間でダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバンという新しい治療薬が登場している。

 ワルファリンには脳出血の危険性や一部の食品や他の薬からの影響を受けるという使いにくさがあるが、新しい抗凝固薬はワルファリンと同等の効果がありながら、脳出血の危険性が低い。

 「この数年で抗凝固療法は進歩した。患者一人ひとりに応じた、きめ細やかなリスクの評価および最適な治療法を選択できるようになっている。そのために、個々の患者のリスク評価をしっかり行うことが重要」と、研究チームは述べている。

群馬大学大学院医学系研究科 臓器病態内科