「食物繊維」は健康なエイジングに必須 ジャガイモは血圧を上昇させる
2016年06月23日
食事で食物繊維をしっかり摂っている人は、歳を重ねても健康でいきいきと生活できる。ただし、糖質の多い高カロリーの食品には注意が必要となる――50歳の男女1,600人を対象に10年間調査した研究で、食物繊維のアンチエイジング効果が確かめられた。
食物繊維を摂ると「健康的なエイジング」が8割増える
食物繊維は消化されないためエネルギーにはなりにくいが、口から入って大腸を通り抜けるまでさまざまな器官で、体の調整に役立つ。たとえば胃でとどまる時間が長いため満腹感が持続し、小腸では糖質やコレステロール、有害物質の吸収を抑える。大腸では腸内細菌のバランスを整え、便通を改善させる働きをする。
野菜や果物、全粒粉のパンやシリアルなどから食物繊維を十分に摂ると、加齢に伴う病気や身体の不調を予防するのを助けてくれることが、オートストラリアのウエストミード医学研究所の研究で明らかになった。
「1,600人以上を10年間かけて調査して分かったことは、食物繊維を十分に摂っている人は、健康的なエイジングを達成できる割合がおよそ80%増加することです。食物繊維を摂っている人では、高血圧、2型糖尿病、認知症、うつ病、体の機能障害を発症する比率が明らかに低かったのです」と、ウエストミード医学研究所のバミニ ゴピナス氏は言う。
1日に約30gの食物繊維が体を変える
研究チームは、49歳の男女1,609人を対象に10年間の追跡調査を行い、食物繊維などの栄養素の摂取状況と、加齢に伴い増える病気の関連について調べた。
ここでいう「健康的なエイジング」とは、脳卒中や冠動脈疾患、呼吸器疾患、認知障害、うつ病、身体の不調などの慢性疾患がない状態としている。10年間で「健康的なエイジング」を達成できたのは全体の15.5%だったが、食物繊維を多く摂取している人では、その割合が1.79倍に上昇した。
健康的なエイジングに成功した人たちは、食物繊維を1日に平均29.0g摂っており、野菜から10.0gを、パンなどの穀類から8.2gをそれぞれ摂っていた。
ちなみに、日本人の食物繊維の平均摂取量は1日に14.3g(平成26年国民健康・栄養調査)。今回の研究で健康なエイジングに成功した人たちは、日本人の2倍以上の食物繊維を摂っていたことになる。
食後の血糖値を上げにくい食品が糖尿病や高血圧に効果
糖質の多い野菜には注意 ジャガイモは血圧を上昇させる
食物繊維が多く含まれる食品の代表格は野菜だ。ただし、注意した方が良い野菜もある。ジャガイモ、サトイモ、サツマイモ、カボチャ、トウモロコシ、レンコンなどの糖質の多い野菜だ。
中でもジャガイモは、いろいろな料理に使える、保存が効く、年間を通して流通しており価格が変動しないといった点から、人気の高い野菜だ。
そのジャガイモを食べ過ぎると、高血圧の危険性が高まるおそれがあるという研究が発表された。ジャガイモにも食物繊維が含まれるが、糖質が多く高カロリーなので、食べ過ぎに注意した方が良いという。
この研究は、米国のブリガム アンド ウィメンズ病院などの研究チームによるもので、医学誌「ブリティッシュ メディカル ジャーナル」に発表された。
研究チームは、米国に在住している男女18万7,000人以上を20年以上にわたり調査した。食事の摂取状況と生活習慣病の発症との関連を調べた。
その結果、ジャガイモを週に4回以上食べている女性では、月に1回未満の場合に比べ、高血圧の発症リスクが11%上昇するという。
調理法は「焼き」や「ゆで」、「マッシュポテト」だった。さらに「フライ」にすると、高血圧のリスクは17%に増えるという。
「ジャガイモは野菜の中では糖質が多く、グリセミック指数が高い。食べ過ぎると、食後の血糖値が上昇したり、血糖を下げるインスリンの値が上昇するおそれがあります。野菜が体に良いことは確かですが、ジャガイモなどの糖質の多いものには気を付けた方が良さそうです」と、研究者は指摘している。
Research reveals dietary fibre is the secret to healthy old age(ウエストミード医学研究所 2016年5月30日)Association Between Carbohydrate Nutrition and Successful Aging Over 10 Years(The Journals of Gerontology Series A 2016年6月1日)
Higher potato consumption associated with increased risk of high blood pressure(British Medical Journal 2016年5月17日)
掲載記事・図表の無断転用を禁じます。 ©2006-2024 soshinsha. 日本医療・健康情報研究所