お酒に強い人は「痛風」にも注意 痛風の発症リスクが2倍以上に上昇
2016年06月07日
お酒に強い遺伝子をもつ人は、そうでない人に比べ2倍以上痛風になりやすいと、防衛医科大学校と国立遺伝学研究所などの研究グループが発表した。お酒に強い人は飲酒量も多い傾向にあるが、飲酒が痛風のリスク要因であることが遺伝子レベルで裏付けられた。
痛風の発症に遺伝的要因が大きく関わっている
痛風は、尿酸値が高い状態が続き発症する疾患で、「風が吹いても痛い」と言われるほどの激しい関節炎発作を引き起こすことが知られる。激しい関節痛をもたらすのに加え、高血圧症や腎疾患、心疾患、脳血管障害などのリスクにもなることが明らかになってきている。
痛風は、高尿酸血症(血液中の尿酸値が7.0 mg/dLより高い)が持続することで発症する。食生活の欧米化や肥満などの環境要因が痛風の発症リスクを高めるが、生活習慣が同じようであっても、痛風を発症する人としない人に分かれる。痛風の発症には遺伝的要因が関わっていると考えられている。
防衛医科大学校の松尾洋孝講師と崎山真幸医官らの研究グループは、2015年2月に、ヒトゲノム全体を調べるゲノムワイド関連解析(GWAS)を行い、新規のものも含め、痛風の発症に関わる5つの遺伝子領域を発見した。
そのうち2つは尿酸トランスポーターとしてよく知られている「ABCG2遺伝子」と「SLC2A9遺伝子」であり、2つは糖質代謝に関わる「GCKR遺伝子」とグルタミン酸受容体に関連する「CNIH-2遺伝子」だった。
しかし残るひとつの領域は、12番染色体のMYL2遺伝子とCUX2遺伝子の遺伝子間にあり、痛風と関連する遺伝子は別にある可能性がある。今回の研究ではその同定を目指した。
飲酒が痛風のリスクに お酒に強い人は痛風リスクが2倍以上に上昇
研究チームは、「2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)」と呼ばれる体内でアルコールを分解する酵素に着目。
ヒトゲノムの解析を通じて、ALDH2の504番目のアミノ酸に遺伝子変異のある人は、ない人に比べアルコール代謝が遅いため、お酒に弱く、痛風を発症しにくいことを突き止めた。
さらに、ALDH2に遺伝子変異がないお酒に強い人は、変異がある人に比べ、痛風を2倍以上発症しやすいことも判明した。
研究チームは、東京と京都、静岡のクリニックに通う患者のうち、痛風の男性1,048人と、尿酸値が正常な男性1,334人の2グループを対象に、遺伝子解析の結果を比較した。
飲酒が痛風のリスクになることは以前より知られていたが、今回の成果はそれを遺伝学の面から裏付ける発見となった。
研究が進めば、遺伝子解析を個別に行い、お酒に弱く痛風を発症するリスクの高い人を見つけだし、発症を防ぐために保健指導を行うこともできるようになるという。
「痛風・高尿酸血症はこれまでの研究からも、特に遺伝要因が強い疾患であることが分かっており、今後のゲノム個別化健診や医療のモデルとなることが期待される」と、松尾氏は述べている。
防衛医科大学校分子生体制御学講座
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