ご挨拶

宮崎 滋

一般社団法人 日本肥満症予防協会
理事長 宮崎 滋

 このたび、松澤佑次先生の後任として日本肥満症予防協会理事長に就任いたしました。微力ではありますが、当協会の発展に尽くす所存ですので、ご支援のほど宜しくお願い致します。

 当協会は2015年に松澤先生を理事長として創設され、内臓脂肪に着目した肥満、肥満症の予防を目的として啓発活動を行ってきました。肥満、肥満症は、糖尿病や高血圧、脂質異常症、脂肪肝等の多くの生活習慣病を引き起こすだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞、がん、認知症も発症させます。その原因は内臓脂肪の過剰蓄積であることが明らかになっており、肥満、肥満症の予防・治療の目的は、食事・運動を中心とした生活習慣改善により内臓脂肪を減らし、肥満から派生する疾患を改善・解消することです。

 しかし、生活習慣改善の実践は容易ではないので、当協会は医学的エビデンスに基づく適切な減量による健康維持、増進の重要性を発信し続けていきたいと思います。今後も、当協会は肥満、肥満症の研究・学術面をリードする日本肥満学会と連携し、研究成果を一人でも多くの方々に伝え、肥満、肥満症の予防・治療の重要性を啓発していきたいと考えております。

 また、肥満者に対して、肥満であることを理由とした差別・蔑視というスティグマがいまなお根強くあります。スティグマの解消は当協会の重要な使命の一つであり、その根絶に向け活動致します。

 当協会は肥満、肥満症の予防・治療の啓発活動を担う医療専門家と、健康維持や肥満症の予防に関心を持つ企業の皆様のご協力により運営されています。今後はさらに多くの方々や企業のご参加をいただき、肥満症を予防し、肥満から生じる疾患を改善させ、国民の健康維持・増進に寄与していきたいと考えております。


松澤 佑次

一般社団法人 日本肥満症予防協会
顧問(前・理事長) 松澤 佑次

 2000年に肥満症診断基準、2006年に「肥満症ガイドライン2006」が日本肥満学会で定められ、2005年にはメタボリックシンドロームの診断基準が作成されました。これらを踏まえた「特定健診・保健指導」という、世界に類を見ない国を挙げての肥満・メタボリックシンドローム対策が開始され、2013年にはメタボリックシンドローム該当者数が減少するという成果が上がっています。日本肥満学会を中心とするメタボリックシンドロームや肥満症の研究の進歩は目覚ましく、「肥満研究・対策分野」において、我が国は世界のトップランナーとしての位置を不動のものにしています。

 メタボリックシンドローム、肥満症は、糖尿病や脂質異常症、高血圧などを引き起こすだけでなく、心筋梗塞、脳梗塞などの重篤な動脈硬化性疾患の原因となり、さらに最近ではがん、認知症、CKD(慢性腎臓病)、SAS(睡眠時無呼吸症候群)、ロコモティブシンドロームを引き起こすことも明らかになってきています。メタボリックシンドローム及び肥満症対策を行うことで、国家プロジェクトのテーマである「日本人の健康寿命延伸」に大きく貢献することが期待されています。しかし、メタボリックシンドローム・肥満症の認知は一定の広がりを見せているとは言え、そのリスクやさまざまな疾患との関連等未だ十分に理解されておらず、またそれに対する取り組みは十分な効果をあげているとは言えません。

 肥満症・メタボリックシンドロームの理解を深め、体重を増加させない健康的な生活習慣を育ていくために、患者や2000万人を超える予備軍に対して、健康情報を提供し、健康の悪化や肥満症への進展を防ぐことが急務です。肥満症の関連疾患の臨床を行っている医師やさまざまな分野で活動する医療スタッフ、保健指導スタッフだけでなく、健康維持や肥満症の予防に関心を持つ企業の参加をお願いし、肥満症予防ネットワークを構築し情報を提供し、実践活動をおこなう担い手として『一般社団法人 日本肥満症予防協会』を設立することに致しました。

(2025年07月)